2. スマートマニュファクチャリングの背景にある技術動向

2.1 ITとOTの融合、情報の流れの変化(階層構造からネットワーク構造へ)

 技術の進歩によりOT分野にIT技術を導入しやすくなり、OT領域とされていたI/Oから制御、監視、MES、ERPのピラミッド全体でIT技術が活用されるようになってきた。情報の流れに着目すると、従来のピラミッド型階層構造は、この先、必要な場所に必要なデータが届けられる「サイバーフィジカルシステム」へと進んでいく。このとき機能は維持された状態であるため、サイバーフィジカルシステムでは機能のネットワークが形成されるようになる(図2.1)。そして、これまでピラミッドの階層のインタフェースを見ていた代わりに、ネットワークの個々のノード(図2.1右図の●印)が共通して持てる情報の意味が重要になってくる。 

 

 図 2.1 情報の流れの変化

 

 

2.2 バリューチェーンとデジタルツイン

 工場(生産現場)を取り巻く環境も変わってくる。スマートマニュファクチャリングの様態では、工場における機能のピラミッドを中心に複数のバリューチェーン(サプライチェーン、製品ライフサイクル、工場ライフサイクル)が交わるようになり(図2.2)、それぞれのバリューチェーンの最適化にとどまらずバリューチェーン同士の連携の必要性が増していくのである。

 

図 2.2 工場におけるバリューチェーンの連携

 

 ここで出てくるのが、「デジタルツイン」(図2.3)という考え方である。この概念においては、まず実際の物理的な物(現場)と現場に対応するコンピュータ上のモデル(例えば、製品や生産ラインのモデル)が存在する。そして、モデル側のシミュレーション結果を現場に反映し、また、現場で起きた問題をモデルに反映するというサイクルを回すことにより、全体として進化していく。このデジタルツインにより、図2.2に示されたピラミッド内の情報共有やバリューチェーンが進化していくと考えられる。

 

図 2.3 デジタルツイン

 

 デジタルツインを作る上で重要となるのが、情報モデルである。現実の物理的な世界のサプライチェーンをサイバーな空間にマップする場合、物だけではなくその物を記述するための情報が必要となるからである。そして、現実の世界のサプライチェーンの構築に既存の標準が使われているのと同様に、サイバーの世界で情報のサプライチェーンを構築するための新しい標準の開発が必要とされるようになり(図2.4)、現在の標準化活動ではこの点に重きが置かれている。

  

 図 2.4 バリューチェーンとデジタルツイン

 

  

【参考資料】

スマートマニュファクチャリング国際標準化フォーラム2020

Speech 2 「Smart Manufacturing実現に向けたシステムアプローチ」(小田 信二氏)講演資料

 

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